生前葬とは?基本的な流れや参列する際のマナーについて解説
生きている間に本人自らが喪主となって執り行う「生前葬」。著名人が行ったり、テレビドラマで描かれたりしたことをきっかけに広く知られるようになりましたが、具体的にどのような儀式を行うのか、いまいちピンとこない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、新しい葬儀形式として注目を集める「生前葬」について徹底解説。生前葬を営むメリットから、実際に執り行う際の注意点、式次第の基本的な構成まで、押さえておくべき基礎知識をたっぷり紹介していきます。後半では、参列者のマナーについても触れているので、自身の生前葬を検討している方はもちろん、参列を予定している方もぜひ参考にしてみてください。
生前葬とは?
生前葬とは、その名の通り、生前に執り行う葬儀のことを指します。
営む目的は人によって異なりますが、「元気なうちにお世話になった人たちへ直接感謝の気持ちを伝えたい」という想いが込められているケースが多く、基本的には本人自身が主催者(喪主)となって葬儀を執り行います。
ただ、「葬儀」とはいえ、生前葬には死後に営まれる一般的な葬儀のような決まった形式は存在しません。もちろん、宗教者の承諾を得られれば、宗教に則った葬儀を執り行うこともできますが、本人の趣向を反映するために、形式にこだわらない無宗教形式で行われることが多く、映像演出があったり、余興の時間があったり…と、従来のような厳粛な雰囲気ではなく、結婚披露宴やパーティーのような明るい雰囲気で行われるものが多い傾向にあります。
生前葬を執り行う3つのメリット
それでは、死後ではなく、生前に葬儀を営むことにより、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。ここで、主なメリットを3つ紹介します。
・感謝の気持ちを直接伝えられる
・理想的な葬儀を実現できる
・家族の負担を軽減できる
詳しく見ていきましょう。
感謝の気持ちを直接伝えられる
生前葬を行う最大のメリットは、お世話になった家族や友人・知人へ直接感謝の気持ちを伝えられる点です。
一般的な葬儀の場合はすでに他界してしまっているため、参列者に対して自らお礼やお別れを述べることはできませんが、生前葬であれば、1人ひとりに対して丁寧にお礼を伝えることができます。人生の節目のタイミングでお別れの場を設けることで、人生の社会的活動にもいったん区切りをつけることができるので、主催者自身も今後の人生を前向きに歩めるようになるでしょう。
理想的な葬儀を実現できる
自分の希望を反映した理想的な葬儀を実現できるのも、生前葬の魅力の1つです。
一般的な葬儀も生前に家族へ希望を伝えることはできますが、残念ながら自分でその葬儀を見届けることはできません。また、死後の葬儀は決まった形式に則って執り行われるケースが多いため、必ずしも希望を叶えられるとは限らないでしょう。
その点、生前葬は決まった形式が存在しないため、葬儀内容を自由に決めることができます。たとえば、趣味で続けてきた陶芸や絵画を展示したり、カラオケやビンゴ大会など全員参加型のイベントを開催したり。一般的な葬儀のように準備時間や会場(開催場所)の制約を受けることもなく、納得がいくまで企画を練ることができるので、満足のいく葬儀を実現できるでしょう。
家族の負担を軽減できる
生前葬は、将来的に遺される家族の負担軽減にもつながります。
日本の標準的な葬儀スタイルといえる「一般葬」は、近親者のほかに友人・知人や会社関係者など、生前に故人と縁のあった人たちを幅広く招待し大規模に執り行うため、遺族にかかる負担も大きくなりやすいですが、生前葬を行っている場合は、すでに関係者への挨拶が済んでいるため、葬儀形式をある程度簡略化することができます。
近親者を中心に故人とごく近しい人たちだけで執り行う「家族葬」や告別式から火葬までを1日で済ませる「一日葬」といった小規模な葬儀であれば、一般葬に比べて葬儀費用を抑えられますし、遺された家族も参列者の対応に追われることなく、故人とのお別れの時間をゆっくりと過ごすことができるため、遺族にかかる身体的・経済的な負担を少なからず軽減できるでしょう。
※家族葬について詳しく知りたい方はこちらの記事もどうぞ
>>家族葬の流れとは?一般葬との違いや参列者の範囲についても徹底解説
生前葬を執り行う際の注意点
このようにメリットの多い生前葬ですが、実際に行う際は次の2点に注意を払う必要があります。
・事前に家族や親族とよく相談する
・死後の葬儀についても考えておく
それぞれ見ていきましょう。
事前に家族や親族とよく相談する
ここ数年で大きく認知度を上げた生前葬ですが、現時点で広く一般に浸透しているとは言い切れません。冒頭でお伝えしたように、著名人のなかには生前葬を営む人も増えてきていますが、一般の人が生前葬を執り行う例はまだ少なく、家族や親族のなかに、生前葬に対してマイナスの感情を抱いている人がいることも十分に考えられます。
そのため、生前葬を希望する場合は、まず家族や親族にその思いを打ち明けましょう。後悔のない生前葬を行うためには、周囲の理解と協力が不可欠であり、何の相談もない状態で自分本位に話を進めてしまうと取り返しのつかないトラブルに発展してしまう恐れがあるため、必ず事前に周囲の理解を得ることが大切です。
死後の葬儀についても考えておく
生前葬を行う際は、あわせて死後の葬儀について考えておくことも重要です。
前述したように、生前葬後の葬儀(死後の葬儀)はある程度簡略化できるため、一般の葬儀よりは比較的少ない負担で済みますが、それでも身近な人を亡くした状態で葬儀の準備を行う遺族の負担は軽いとはいえません。
葬儀に対する価値観は人それぞれであり、自分の考えが家族や親族に認められるとは限らないため、生前葬とともに死後の葬儀に対する意向も伝え、自身の意識がはっきりしている間に死後の葬儀の方向性も固めておきましょう。
生前葬の基本的な流れ
ここからは、生前葬の基本的な流れを紹介していきます。
ただ、前述したように、生前葬に決まった流れやルールは存在しないため、必ずしもこの流れに沿う必要はありません。自身の希望を反映した自由なスタイルで執り行うことができるので、1つの例として参考にしていただければ幸いです。
1.開式
2.主催者(本人)挨拶
3.自分史の紹介
4.来賓挨拶
5.会食・歓談
6.親族・友人のスピーチ
7.各種余興
8.主催者(本人)挨拶
9.閉式
上から順に詳しく確認していきましょう。
1.開式
定刻になったら、司会者により開式の言葉が告げられ、生前葬が始まります。
なお、生前葬の司会進行は葬儀社のスタッフが担当するケースが多いです。
2.主催者(本人)挨拶
開式にあたり、生前葬の主催者として挨拶を行います。このタイミングで、生前葬の開催に至った理由や経緯をしっかりと説明しておきましょう。
3.自分史の紹介
自分史をまとめた動画やスライドなどを放映し、これまでの人生を振り返ります。映像や画像を用いる場合は事前に用意する必要があるため、準備にはそれなりの時間と手間を要しますが、参列者との思い出を振り返ったり、感謝の気持ちを伝えたりできるような内容にすることで、生前葬の時間をより有意義なものにすることができるでしょう。
4.来賓挨拶
招待客の中から数人に挨拶・スピーチをしてもらいます。
来賓挨拶を頼みたい相手には、事前に依頼をしておきましょう。
5.会食・歓談
各テーブルを回って、参列者の方一人ひとりに挨拶を行います。1対1で直接感謝を伝えられるタイミングでもあるので、ゆっくりと会話できるよう時間配分を多めにとってもよいかもしれません。
6.親族・友人のスピーチ
お世話になった親族や親しい友人にスピーチをしてもらいます。
来賓挨拶と同様に、お願いしたい相手には事前に依頼をしておきましょう。
7.各種余興
プロの演奏家を呼んで生演奏を楽しんだり、本人や友人による余興を行ったり…と、さまざまな演出で場を盛り上げます。自由度高く好きなように演出内容を決められるので、周囲の人とも相談しながら企画を練ってみてください。
8.主催者(本人)挨拶
参列してくれた方に向けて、改めてお礼と感謝の気持ちを伝えます。
9.閉式
司会者が閉式を告げたあと、式場の出口で参列者の方々をお見送りしたら生前葬は終了です。
服装や香典は?生前葬の参列マナー
最後に、生前葬へ招待された際の参列マナーを紹介します。
「服装」と「香典」の2つに分けて、詳しく確認していきましょう。
服装
生前葬には「葬」という字が含まれているため、一般的な葬儀のように喪服を着用すべきか悩む人も多いかもしれませんが、本人が存命のうちに執り行われる生前葬は「喪服」ではなく、「平服」で参列するのが一般的です。そのため、生前葬に招待された際は、男性ならスーツ、女性ならワンピースやアンサンブルといった平服を着用して参列するようにしましょう。
ただし、これはドレスコードが指定されていない場合に限ります。案内状に服装に関する記載がある場合は、その案内に従うのが基本となるため、案内状を受け取ったら、まずは「平服でお越しください」などドレスコードの指定がないか、よく確認してみましょう。
案内状に服装に関する記載がない場合は、前述の通り、平服での参列で問題ないとされていますが、どうしても心配な場合は、主催者に確認するのも1つの手です。ドレスコードに関する問い合わせはマナー違反にあたらないため、不安を感じるようであれば、主催者や関係者の方へ直接確認してみましょう。
香典
生前葬は会費制で行われるケースが多く、案内状に「会費制」と明記されている場合は、香典を持参する必要はありません。会費制の場合は、案内状に会費制で実施する旨とともに「会費:○○円」と金額が書かれているため、指定された金額を渡すようにしましょう。
また、生前葬は主催者が参列者に対して感謝を伝える場であることから、香典も会費も受け取らないケースがあります。その場合は、案内状に香典辞退の旨が記載されているため、素直にその案内に従いましょう。ただ、どうしても渡したい場合は、香典ではなく「御礼」や「御長命の御祝い」という名目で熨斗袋に包んで渡したり、後日お礼や感謝のメッセージとともにちょっとした品物を贈ったりする場合もあります。
案内状に会費や香典に関する記載がない場合は、香典を持参するのがマナーとされています。一般的に生前葬の香典は1~2万円が相場とされているため、いずれの記載もない場合は念のため香典を用意しておきましょう。なお、香典を持参する際は、お祝いの意味合いが強い生前葬であれば祝儀袋、判断が難しい場合は白無地の封筒または奉書紙で包むのが無難です。表書きも「御霊前」や「御香典」ではなく「寸志」「御礼」「御花料」などにしたほうがよいでしょう。
まとめ
ここまで「生前葬」について解説してきました。生前葬には、お世話になった人たちへ直接感謝の気持ちを伝えられたり、将来的に遺される家族の負担を軽減できたりと、生きているうちに行うからこそ得られるさまざまなメリットが存在します。疑似的な死を通して人生にいったん区切りをつけることにもなるので、主催者自身もその後の人生を新たな気持ちで歩むことができるでしょう。
ただ、生前葬は前例が少なく、まだまだ社会に浸透しているとは言い難いため、周りから反対されるケースも珍しくありません。そのため、生前葬を検討している場合は、まず家族や身近な人たちへ相談し、彼らの理解を得るところからスタートしましょう。そして、みんなが納得できる生前葬を実現できるよう、家族や友人と一緒になって企画に取り組んでみてください。
なお、弊社では生前葬を含む葬儀や終活のサポートを行っております。お客様のご要望をお伺いしたうえで、1人ひとりに合った葬儀プランをご提案いたしますので、何か気になることがあれば、お気軽にお問い合わせください。
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