家族葬の流れとは?一般葬との違いや参列者の範囲についても徹底解説
これまでの葬儀は、会社関係者や近所の人など、生前に故人と関わりのあった人を幅広く招待するスタイルが一般的でした。
しかし、近年では「身内だけでささやかな葬儀を行いたい」と考える人が増えてきており、近親者や親しい友人など限られた人数だけで葬儀を営む「家族葬」が主流になりつつあります。 具体的にどのような特徴があるのか、本記事では一般葬との違いから家族葬を選択するメリット・デメリット、具体的な葬儀の流れまで、詳しく解説していきます。
家族葬とは?
家族葬とは、近親者を中心に故人と関係性の深い人たちだけで営む葬儀のことを指します。その名前から家族や親族しか参列できないと思われがちですが、実は明確な定義は定められていません。ごく近しい家族・親族のみで執り行うものから生前に故人と親しかった友人や知人を招待するものまで、その範囲は各遺族の判断に委ねられます。
家族葬と一般葬の主な違い
家族葬と一般葬の主な違いは「葬儀の規模」です。
先述したように、家族葬は故人と近しい人のみが出席するため、数人から多くても50人前後と比較的少人数で行われます。これに対して一般葬は、近親者のほかに、友人や知人、勤務先の関係者、近所の人など故人と交流のあったほぼ全ての人に声をかけるため、参列者が100人以上に及ぶことも珍しくありません。葬儀の流れに大きな違いはありませんが、一般葬に比べて規模が小さくなるため、その分、葬儀にかける手間や時間を抑えられるでしょう。
家族葬のメリット&デメリット
では、家族葬を選択することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。デメリットとともに確認していきましょう。
メリット
家族葬のメリットは、主に3つあります。
● 故人とのお別れの時間をゆっくり過ごせる
● 葬儀当日の負担を軽減できる
● 自由度の高い葬儀を実現できる
最大のメリットは、故人と親交の深い人たちだけで静かにお見送りができる点です。一般葬のように参列者への気遣いや対応に追われることがないため、自分たちのペースでゆっくりと故人を偲ぶことができます。思い出話に花を咲かせたり、お世話になった人にお礼を伝えたり、リラックスした雰囲気でお別れの時間を過ごせるでしょう。
また、家族葬は気心の知れた人しか参列しないため、世間体や形式に縛られる必要がありません。故人が生前に愛用していたものを飾ったり、好きだったアーティストの曲をBGMにしたりと、故人や遺族の希望を取り入れた自由な葬儀を実現できます。
デメリット
家族葬はメリットの多い葬儀形式ですが、一方でデメリットも存在します。
● トラブルに発展する恐れがある
● 葬儀後に個別の弔問客対応が必要な場合がある
● 一般葬よりも費用負担が大きくなる可能性がある
まず、家族葬を実施するにあたって注意しておきたいのが、人間関係のトラブルです。前述したように、家族葬では声をかける範囲を遺族側で決めるため、参列者の線引きが曖昧だったり、説明が足りていなかったりすると「どうして〇〇さんは呼ばれたのに、私は呼ばれなかったのか」「私も行きたかったのに」など、参列できなかった人との間に軋轢が生まれてしまう可能性があります。
また、家族葬は比較的新しい葬儀スタイルなので、伝統や風習を重んじる親族から反対を受けるケースも少なくありません。周囲の理解を得られないまま葬儀を行ってしまうと「なぜ先祖代々行ってきた葬儀の形式を守らなかったんだ」と、価値観の違いからトラブルに発展してしまうこともあります。一般的に、家族葬へ呼ばなかった人には、葬儀後に訃報および家族葬で執り行った旨を通知するのがマナーとされていますが、こうした不平不満を生まないためにも、故人と近しい親族や友人などにはあらかじめ会葬辞退の案内を送っておいた方がよいでしょう。
さらに、家族葬は参列者を限定していることから、後日弔問客の対応に追われるケースも想定しておかなければなりません。予期せぬ訪問が続いたり、新たに香典返しを準備したりと、結果的に負担が大きくなる場合もあるため、香典や弔問を辞退したい場合は、訃報に辞退の意向を明記しておくとよいでしょう。
最後に料金面ですが、会葬者の少ない家族葬は一般葬に比べて飲食接待費や返礼費用などがかからないため、葬儀費用の総額は抑えられる傾向にあります。ただし、人が少ない分、葬儀費用に充てられる香典収入も減ってしまうため注意が必要です。場合によっては一般葬よりも費用負担が大きくなってしまう可能性があるため、無理のない葬儀プランを設計するようにしましょう。
家族葬の基本的な流れ
続いて、家族葬の基本的な流れを次の順に解説していきます。
1. 危篤・ご臨終
2. お迎え・安置
3. お通夜・葬儀・告別式の打ち合わせ
4. 湯灌の儀・納棺
5. お通夜
6. 葬儀・告別式
7. 出棺・火葬
8. 換骨法要・初七日法要
9. 精進落とし・散会
なお、今回紹介する内容は、あくまでも一般的な家族葬の例です。地域や宗派によって、葬儀の流れやマナーが異なる可能性があるため、事前に自宗の作法を確認しておきましょう。
では、詳しく説明していきます。
1.危篤・ご臨終
医師から危篤の知らせを受けたら、まずは近親者や親しい友人・知人に連絡しましょう。緊急を要することなので、深夜や早朝であっても電話して構いません。血のつながりに捉われず、最期に立ち会ってもらいたい人へ早急に危篤連絡を行いましょう。
ご臨終を迎えると、医師による死亡確認が行われ、死亡診断書が発行されます。医療スタッフによるエンゼルケアが行われるため、その間に葬儀社へ連絡しておきましょう。なお、自宅療養中の場合は、かかりつけの医師に連絡をして指示を仰いでください。
2.お迎え・安置
葬儀社へ連絡すると、葬儀スタッフが寝台車で迎えに来ます。病院で亡くなった場合は、死後数時間以内に自宅もしくは葬儀場の用意した安置施設へと搬送する必要があるため、事前に安置場所を決めておくとよいでしょう。
3.お通夜・葬儀・告別式の打ち合わせ
家族葬の打ち合わせでは、主に次のような内容を決めていきます。
● 喪主
打ち合わせに入る前に喪主を務める人を決定します。一般的に、配偶者もしくは血縁の近い人が候補になるケースが多いです。
● 菩提寺の確認
菩提寺がある場合は、寺院にも連絡を入れておきましょう。葬儀の日程を決める際は僧侶の都合も考慮する必要があるため、逝去後なるべく早い段階で確認しておくのがおすすめです。
● 葬儀の場所と日時
葬儀の場所や日時は、式場や火葬場、霊きゅう車の空き状況などを踏まえて決定します。遺族の希望だけでは決められないため、葬儀社と相談しながら日程を調整していきましょう。
● 葬儀プラン
葬儀の費用は、依頼する葬儀社や内容によって大きく異なります。葬儀プランの金額自体はリーズナブルでもオプションで高額になってしまうケースもあるため、総額を計算したうえで納得のいくプランを選ぶようにしましょう。
家族葬の日時や内容が固まったら、お通夜・葬儀・告別式に向けて準備を進めていきます。一般的にお通夜は亡くなった翌日の夜、葬儀は亡くなった翌々日に行われるため、それに間に合うよう葬儀参列の案内を送ったり、必要なもの(火葬許可証・遺影・骨箱・骨壺・供物・副葬品など)を揃えたりしておきましょう。
4.湯灌の儀・納棺
お通夜の前には「湯灌の儀」と呼ばれる儀式が行われます。文字通り亡くなった方の体をお湯で洗い清めることで、故人の安らかな旅立ちを願う意味が込められています。
全身を清めた後は、白装束に着替えて納棺されます。故人の愛用品や写真などを副葬品として棺に納めたい場合は、このタイミングまでに用意しておきましょう。
5.お通夜
お通夜当日は次のような流れで進行していきます。
1. 受付
受付は開式の30分から1時間ほど前に開始します。一般葬では会社関係者や故人の友人など家族以外の人が担当するのが一般的ですが、家族葬の場合は人数が少ないため、親族が受付を担当したり、受付自体を省略したりすることも珍しくありません。
なお、受付では、芳名帳への記帳や香典の受け渡しなどを行います。もし、香典を辞退する場合は、家族葬の案内を送る際に香典辞退の旨を明記しておきましょう。
2. 開式
一同が着席したら、僧侶が入場しお通夜が始まります。
3. 読経・焼香
まずは10~15分ほど読経があり、その後に焼香を行います。焼香のタイミングは司会者が案内してくれるので、指示に従って動きましょう。なお、焼香の順番は喪主を先頭に遺族・親族・一般参列者と続くのが一般的です。
4. (僧侶説法・喪主挨拶)
焼香の後には、僧侶による説法と喪主挨拶が行われます。しかし、家族葬ではこれらの工程を省くケースも多く、読経が終わった段階で僧侶が退場し、閉式となることもあります。
5. 閉式・通夜振る舞い
閉式後、通夜振る舞いへと移ります。
ちなみに、通夜振る舞いとは、お通夜のあとに振る舞われるお酒や食事のことです。元来は精進料理を提供するのが通例でしたが、近年では刺身や寿司などを出すこともあります。比較的自由が利く部分なので、オードブルなどの大皿で料理を提供したり、故人の好きだった料理を用意したり、参列者の属性や故人の希望などを考慮して選ぶとよいでしょう。
なお、祭壇設営などの準備や式の司会進行は葬儀社が行うため、基本的にはスタッフに委ねてしまって問題ありません。何か不明点やトラブルがあった場合は、まずスタッフに相談してみましょう。
6.葬儀・告別式
続いて、告別式当日の流れについて解説していきます。
1. 受付
受付の流れは、お通夜とほぼ同じです。必ずしも必要なものではないので、人数が少ない場合は設置しなくても構いません。
2. 開式
定刻になると僧侶が入場し、司会者による開式の辞をもって告別式が始まります。
3. 読経・焼香
まずは、僧侶による読経が行われます。読経時間は宗派によって異なりますが、大体30~60分程度を目安に行われるのが一般的です。僧侶が読経している最中に焼香が行われるため、スタッフの指示に従って動きましょう。
ちなみに、開式から喪主・親族までの焼香が「葬儀」、一般参列者の焼香に入った時点で「告別式」になります。
4. (弔辞・弔電)
焼香の前もしくは後に弔辞・弔電の奉読が入ります。しかし、家族葬では弔電もしくは弔辞・弔電ともに省略することも多いため、事前の打ち合わせで相談しておきましょう。
5. お花入れ・喪主挨拶
読経(または弔辞・弔電)が終わると僧侶が退場し、お花入れが行われます。故人の顔を見る最後のタイミングとなるので、心残りがないよう感謝の気持ちを伝えましょう。
お別れが終わったら、喪主による遺族代表挨拶を行って閉式となります。
7.出棺・火葬
葬儀・告別式の終了後、棺を霊きゅう車に運び出し、火葬場へと移動します。同行者は葬儀社が準備するマイクロバスやハイヤーに乗車するため、あらかじめスタッフに同行する人数を伝えておくと安心です。
なお、火葬場到着後は、次のような流れで進行します。
1. 読経・焼香
2. 火葬
3. 拾骨
多くの葬儀場では火葬場での動きも誘導してくれるため、ここも基本的には葬儀スタッフにお任せして問題ありません。ただし、火葬をする際に必要な「火葬許可証」と「骨箱・骨壺」は自分で用意する必要があるため、忘れずに準備しておきましょう。
8.換骨法要・初七日法要
火葬後再度会場に戻り、換骨法要と初七日法要を行います。本来、初七日法要は故人の命日から7日目に行うものですが、現在は親族が遠方から集まる負担を軽減するために、葬儀の日に繰り上げて行われるケースが多いです。
9.精進落とし・散会
法要が終わったら、食事の席に移動し精進落としの準備を行います。ちなみに、精進落としとは、会葬者や僧侶など葬儀でお世話になった方々を労う目的で用意する食事のことです。もともとは四十九日の忌明けに精進料理から通常の食事に戻すことを「精進落とし」と呼んでいましたが、現代では初七日法要のあとに振る舞う料理を「精進落とし」と称するのが一般的になっています。
その後、精進落としが終わりを迎えるタイミングで喪主が散会挨拶を行い、解散となります。宗派によっては「お清めの塩」を配布することがあるので、自宗の作法を確認しておきましょう。
家族葬が終わったあとにやるべき3つのこと
最後に、葬儀終了後の流れを簡単に紹介します。
1. 関係者への連絡(お礼・香典返し等の返礼品手配・未参列者への通知)
葬儀が終わったら、まず香典返しの手配や未参列者への事後報告を行いましょう。
ちなみに、香典返しには「即返し」と「後返し」という2通りの方法があります。「即返し」とは、香典を受け取ったその場でお返しする方法で、いただいた金額に関わらず一律で同じ品物を渡します。この方法を選んだ場合は、一定金額以上(1万円以上など)いただいた方だけに差額分を後返しすればOKです。
「後返し」とは、香典の金額に応じて異なる品物を葬儀後に送付する方法です。一般的に、いただいた金額の3~5割程度の品物を返すのが相場とされていますが、リスト作成や商品選びに大変な労力がかかるため、近年では「即返し」を選ぶ人の方が多い傾向にあります。
2. 役所・保険会社への手続き
葬儀の後は、役所・保険関連の手続きを行うのも忘れてはいけません。生命保険の請求や「年金受給権者死亡届」の手配、相続税の申告など、重要な手続きが残っているため、抜け漏れがないよう慎重に行いましょう。
3. 四十九日法要・納骨
故人の命日から49日目に行う四十九日法要では、お墓や納骨堂に骨壺を納める納骨法要も行います。菩提寺に法要の依頼をしたり、親戚に案内を出したり、会食の場所を予約したりと事前準備が必要なので、早めに取りかかるようにしましょう。
まとめ
今回は、家族葬について解説してきました。
冒頭でお伝えしたように、家族葬は比較的自由なスタイルで行えるため、故人の遺志や遺族の要望を柔軟に反映することができます。参列者の対応に追われることなく、温かい雰囲気のなかで故人とゆっくり向き合えるため、悔いのない葬儀にできるでしょう。
ただし、家族葬を執り行う場合は、式に呼ばない方への配慮も欠かしてはいけません。理解を得られないままに行ってしまうとトラブルに発展してしまう可能性があるため、しっかりと説明を行い、誤解を生まぬよう気をつけましょう。
なお、弊社ではフルオーダー制の葬儀を行っております。葬儀後のサポートも充実しておりますので、家族葬をはじめ葬儀に関するご要望があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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